2011年11月6日日曜日

人の砂漠

人の砂漠 沢木耕太郎 新潮文庫

を読んだ。

先月ブラックバードをバイク屋さんに預けに行った帰り、長距離バスの中で読もうと中古本屋で105円で買った文庫本。あまり時間の無い中、作家と短編集であるということだけで選んだ本だったが、実際に読み始めてみるとやけに字が小さくて読みずらい。行間や文字間も少し狭い気がする。裏表紙を1枚めくると「定価400円 昭和55年12月25日発行」とある。今時の400ページ以上ある文庫本なら少なくとも600円程度はするだろうし、文字も大きいのでページ数も相当なものになるか2冊に分かれていると思う。出版社によってページあたりの文字数が違うと思うけど、解説の最後のページが439ページなので、文字の大きさを1割2分増しで計算すると526.8ページとなる。自分の場合は、どちらかと言うと105円で買ってちょっと得した気分。

10月中はくだらない遊びばかりをしていて全然本を読まなかった。遊びによる浪費という経験だけ積ませてもらった。

ルポ・ルタージュ、ノン・フィクションの8つの短編からなる「人の砂漠」。どれもこれも『すんなりと自分に入って来る』気がした。けれど、内容的に読み進めことが難しかったりするものもあったので、読み終えるのに時間が掛かったとも思う。

これまで、沢木耕太郎さんの作品は「深夜特急」「凍」しか読んだことがなかったけど、いずれも好きな作品だ。旅の本は結構な冊数読んだけれど、『自分はいつか旅に出るんだ』という気持ちを持続させているのは「深夜特急」だと思う。沢木耕太郎さんのこの作品でしかそう思っていない。山の本としての「凍」も、日本の大衆一般的には「とあるアルピニスト山野井泰史」である山野井さんを自分に教えてくれた記念すべき本である。山野井さんはギャチュンカンから生きて帰ったから良いと思うし、今、同じ時代を生きた人間として今も存在し続けているからそれだけで嬉しく思う。また、ポツリ、ポツリと、何らかの媒体を通して彼の感じていることを知ることができるのがとても貴重であり、とても嬉しく思う。

「人の砂漠」中で1番短い短編、「ロシアを望む岬」を読んで、自分が何故、沢木耕太郎という作家の作品が好きかという理由がわかった気がした。8つの短編のうち1番短く、それだけのページでしか表現できなかった、自分の知っている世界だったから。もし自分が己が感じたように「ロシアを望む岬」を書いたならば、おそらく同じように原稿は多くの枚数にならないと思うし、そこに凝縮する言葉や文章で十分だし、それで伝わらなければ仕方がないと思うから。調べれば調べる程広く、まとめて伝えるには難しいのではないかと感じ、「ロシアを望む岬」はそのように文章化され、短編の一部となり出版されていた。

本作は個人的に、読んでとても良かったなと思える本だった。

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